物性データ
この世の中で、プラスチックを大きく分けて、約40種類!私たちが生活していくうえで、欠かせない存在となっています。人間の顔や性格がひとり一人違っているように、プラスチックもまた、すべて異なった性質を持っているのです。今回は、プラスチックの性質を測定するための、主な試験法について説明いたします。また、この試験法は、日本工業規格(JIS)等で規定されています。
試験規格 ポリエチレン ポリプロピレン メチルベンテン樹脂 ポリカーボネイト 塩化ビニール樹脂
低密度 高密度 非強化 TPX 硬質
JIS ASTM LD-PE HD-PE PP PMP PC PVC
物理的性質 透明性 透明〜不透明 透明〜不透明 透明〜不透明 透明〜半透明 透明〜不透明 透明〜不透明
密度(比重) g・cm-3 K6911・K7112 D792 0.91〜0.92 0.94〜0.965 0.90〜0.91 0.83〜0.84 1.2 1.30〜1.58
機械的性質 引張強さ Mpa D638 8〜31 23〜31 31〜41 15〜31 64〜66 41〜52
最大伸び率 % K7113 D638 90〜600 20〜1300 200〜700 20〜120 100〜130 4.0〜8.0
引張り弾性率 Mpa D638 180〜280 1070〜1090 1100〜1600 1100〜1900 2400 2400〜4100
圧縮強さ Mpa D695 19〜25 38〜55 69〜86 55〜89
曲げ強さ Mpa D790 38〜60 41〜55 43〜57 93 69〜110
衝撃強さ (アイゾットノッチ付き) J/m D256 破壊せず 22〜216 22〜75 267〜427 640〜854 22〜1177
硬さ ロックウェルデュロメータ D785 R80〜102 R35〜85 M70〜72
D2240 D44〜50 D66〜73 D65〜85
熱的性質 熱伝導率 W/(m・K) C177 0.33 0.46〜0.50 0.12 0.1672 4.7 0.15〜0.21
線膨張率 x10-5/℃ D696 10〜22 5.9〜11 8.1〜10 1.5〜5.0 6.8 5.0〜10.0
耐熱性(連続使用温度) 82〜100 121 121〜160 121〜160 121 66〜79
熱変形温度 ℃(18.6kgf/cm-2)
(4.6kgf/cm-2)
K7206
K7207
D648 50〜58.3 61〜72.2 69〜77 41
90
129〜140 60〜76.7
電気的性質 体積抵抗率 Ω・cm D257 >1016 >1016 >1016 >1016 2.1x1016 >1016
絶縁強さ(短時間法) (3.18mm)/kV・mm-1 C3005
C6481
D149 16.5〜27.5 17.3〜23.6 >28 14.9 13.7〜19.6
比誘電率 60Hz
106Hz (MHz)
εγ C3005
C6481
D150 2.25〜2.35 2.30〜2.35 2.2〜2.6 2.12 2.9〜3.1 3.2〜4.0
2.25〜2.35 2.30〜2.35 2.2〜26 2.12 3.1 2.8〜3.1
誘電正接 60Hz
106Hz (MHz)
tanσ C3005
C6481
D150 <0.0005 <0.0005 <0.0005〜 0.0007 0.009 0.007〜0.02
<0.0005 <0.0005 0.0018 0.00025 0.010 0.006〜0.019
耐アーク性 sec D495 135〜160 200〜300 136〜185 10〜120 60〜80
化学的性質 吸水性(24h) 重量% D570 <0.01 <0.01 0.01〜0.03 0.01 0.15 0.04〜0.40
燃焼速度(燃焼性) mm/min D635 26.4 25.4〜26.4 19.1〜21.1 25.4 自消性 38〜39
日光の影響 白化 白化 白化 黄色(わずか) わずか退色ぜい化 形で変わる
メタクリル樹脂 ポリスチレン スチレン・アクリロ スチレン系樹脂 ABS樹脂 ポリアセタール ポリアミド フッ素樹脂
一般用 一般用 ニトリルコポリマー K-RESIN (KR03) 一般用 ホモポリマー ナイロン66 テトラフルオロエチレン
MA PS AS BDS ABS POM PA66 PTFE
物理的性質 透明性 透明〜不透明 透明 透明 透明 半透明〜不透明 半透明〜不透明 半透明〜不透明 透明〜不透明
密度(比重) g・cm-3 1.17〜1.20 1.04〜1.09 1.075〜1.10 1.01 1.01〜1.04 1.42 1.13〜1.15 2.14〜2.2
機械的性質 引張強さ Mpa 48〜73 36〜52 69〜82 25 23〜55 67〜69 78.5 14〜34
最大伸び率 % 2.0〜10.0 1.0〜2.5 1.5〜3.7 132 5.0〜7.0 25〜75 60〜300 200〜400
引張り弾性率 Mpa 2200〜3200 2300〜3300 3300〜3900 1900〜2800 3100〜3600 1590〜3800(Dry)、
1590〜3450(50% RH)
390〜550
圧縮強さ Mpa 73〜125 82〜89 96〜104 45〜52 108〜125 86〜104(Dry) 12
曲げ強さ Mpa 73〜131 69〜101 76〜131 34 43〜96 94〜99 124(Dry)、42(50% RH)
衝撃強さ (アイゾットノッチ付き) J/m 11〜22 19〜24 22〜32 75〜640 64〜123 29〜53(Dry)
45〜112(50% RH)
160
硬さ ロックウェルデュロメータ M68〜105 M60〜75 M80、R83 R100〜120 M92〜94 R120、M63
D68 D50〜65
熱的性質 熱伝導率 W/(m・K) 0.167〜0.252 0.126 0.184 0.23 0.243 0.25
線膨張率 x10-5/℃ 5.0〜9.0 5.0〜8.3 6.5〜6.8 6.5〜9.8 10.0〜11.3 7.0〜12.0
耐熱性(連続使用温度) 60〜88 66〜77 60〜96 60〜65 71〜99 85 82〜149 288
熱変形温度 ℃(18.6kgf/cm-2) (4.6kgf/cm-2) 72〜98
79〜107
104 87〜104 72 96〜105 123 74.8 55
121
86
電気的性質 体積抵抗率 Ω・cm >1014 >1016 >1016 1〜4.8x1016 1x1015 1011〜1014 >1018
絶縁強さ(短時間法) (3.18mm)/kV・mm-1 15.7〜19.6 19.6〜27.5 11.8〜23.6 17.3〜17.7 14.9 23.6 18.8
比誘電率 60Hz
106Hz (MHz)
εγ 3.3〜3.9 2.4〜3.1 2.6〜3.4 2.4〜5.6 3.7 4.3〜5.3 <2.1
2.2〜3.2 2.4〜2.7 2.4〜3.8 2.5 2.4〜3.8 3.7 3.3 <2.1
誘電正接 60Hz
106Hz (MHz)
tanσ 0.04〜0.06 0.0001〜0.0006 0.003〜0.008 0.003〜0.008 0.020 0.0002
0.02〜0.03 0.001〜0.0004 0.007〜0.015 0.007〜0.015 0.0048 0.04 0.0002
耐アーク性 sec トラックなし 60〜140 100〜150 129 130〜140 >300
化学的性質 吸水性(24h) 重量% 0.1〜0.4 0.01〜0.03 0.15〜0.25 0.2〜0.6 0.25〜0.40 1.0〜1.3 <0.01
燃焼速度(燃焼性) mm/min 15.2〜30.5 <38 15.2〜25.4 0.09 15.2〜25.4 25.4〜27.9 自消性 <4
日光の影響 黄色(わずか) 黄色(わずか) 無し〜わずか
黄色化、ぜい化
わずかくもる 少しもろくなるが劣化比較的少ない
1.引張り強さ
引張り強さは引張り応力を集中させるために中央部を細くしたダンベル形の試験片を用い、両端をつかみ具でつかんで一定速度で引張り、試験片を破断する。そのときの最大負荷荷重を試験片のものと最小断面積で除した値で表す。
2.伸び率
引張り試験のとき、引張り試験片の中心より定められた距離に2本の標線を引いておき、試験片が破断したときの標線間距離を測定して、もとの標線間距離に対しどれだけ伸びたかを百分率で表したのが伸び率である。
3.引張り弾性率
引張り試験の場合、試験片にDTFや箔ヒズミ計などを取付け、荷重と標線間伸びとの関係を記録すると曲線が得られる。この関係において、最初の直線部分の傾きが引張り弾性率(ヤング率)に相当する。
4.圧縮試験
圧縮強さは、円柱形あるいは直方体の試験片を加圧ジグに挟んで一定速度[0.3(mm/min); h=試験片の高さ]で圧縮し、試験中に試験片に加えられた最大荷重(通常は破壊時の荷重)を試験片の元の最小断面積で除して求める。
5.曲げ強さ
曲げ強さは試験片を二つの支点で水平に支え、中央部に上から荷重を加えて試験片を折り曲げ試験片が破断するまでの最大荷重を読み取って算出する。(3点曲げ試験)
6.アイゾット式衝撃試験
試験片を垂直に固定して、ノッチのついている側からハンマを振り降ろして試験片を一撃に破壊し、これに要したエネルギーを試験片の切欠き部の断面積で除して衝撃強さとして表す。
7.ロックウェル硬さ試験
試験片に鋼球を接触させたのち、10kgの基準荷重をかけて試験機の指針を0点にあわせる。次に所定の試験荷重を15秒間かけたのち、荷重を再び基準荷重に戻し、15秒後に試験片の表面にできた永久くぼみの深さを指針の目盛から読み取って硬さとする。
8.熱伝導率
熱の伝わる方向に垂直にとった等温平面の単位面積を通って単位時間に垂直に流れる熱量と、この方向の温度勾配との比率を熱伝導率という。熱伝導率は温度によって変化する。
9.熱膨張率
熱膨張率試験では10x10x120mmの試験片を加熱器に入れ、室温から約80℃まで約1時間で温度を上昇させたときの試験片の伸びを測り、温度1℃に対する熱膨張の割合(熱膨張係数)を算出する。
10.耐熱性
所定温度の循環空気浴の中に試験片を4時間つるし、外観に損傷がなければ、その後は損傷が認められるまで、温度を4時間ごとに順次25℃ずつ上昇させて試験する。
11.熱変形温度
曲げ強さ試験と同じように試験片を両端で支え中央に所定の曲げ応力がかかるように重錘をのせ、毎分2±0.2℃の割合で油槽の温度を上昇させる。試験片が0.254mmたわんだときの温度を熱変形温度(HDT)、あるいは荷重たわみ温度とする。
12.体積固有抵抗試験
体積固有抵抗は試料の内部が示す絶縁抵抗である。体積固有抵抗は単位長さを1辺とする立方体の相対する面間の体積抵抗に等しく、つぎのように測定する。円板状試験片の両面に電極を接触させ、結線し、一定の直流電圧(通常は500V)を印加し、1分後の体積抵抗を測定して体積固有抵抗を算出する。
13.絶縁破壊強さ
絶縁破壊強さは試験片が絶縁破壊したときの電圧を試験片の破壊点またはその近くの厚さで除した値として表す。電圧印加方法には短時間と段階法とがある。前者は、平均10〜20秒で絶縁破壊が起こるような一定の速度で電圧を上昇させる方法である。後者は短時間法で得られた絶縁破壊電圧の約40%まで急速に昇圧して20秒毎に規定の割合で段階的に昇圧して20秒間絶縁破壊しなかった最高電圧を絶縁破壊電圧とする方法である。
14.誘電率
コンデンサーの極板の間に試験片を入れ電場をかけ、電気容量を測定する。今真空の場合の静電容量をa、誘電体(試験片)を挿入した場合の静電容量をbとすればb/aをその誘電率という。
15.誘電体力率
交流電圧および電流が、時間の正弦関数で両者の位相差がθであるとき、誘電体中に電圧と同相の微少電流が流れ、電力エネルギーが消費されることになる。これを誘電損失といい、誘電損失をPとすると、PkfE εcosθ で表される。ここでfは周波数、Eは電界強度、εは誘電率、kは比例定数。この場合のcosθを誘電体力率という。
16.耐アーク性試験
2本のタングステン電極を試験片の上に対向して置き、これに高電圧、微少電流のアーク(12,500V、10〜40mA)をとばせて、試料表面が炭化した絶縁性が無くなるまでの瞬間を測定する。耐アーク性は秒単位で表す。
17.吸水性
試験片を一定温度において一定時間蒸留水に浸漬し、そのときの重量増加分と元重量との比を百分率で表したもの。また、物体の単位表面積当りの吸水量で表すこともある。
18.燃焼試験
試験片を炎に近接し、次に炎に入れ、最後に離してその間の軟化の有無、炎の性状、燃焼の難易、自消性の有無、煙の色、燃焼速度、臭い、リトマス反応等を調べて識別する。燃焼速度は、燃焼試験において試験片が燃え続ける場合に、試験片の一定標線距離が燃えきるのに要する時間。
19.耐薬品性(静的浸漬法)
静的浸漬法とは、試験片を評価しようとするある条件の薬液に浸漬しておき、定期的に取り出し、その変化を追跡する方法。通常浸漬期間は、1,2,5,10,30日間について変化を追跡する。